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動いているときに身体がブレるのはなぜ?|「動的バランス」を支える姿勢制御

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動いているときに身体がブレるのはなぜ?|動的バランスと姿勢制御

動いているときに身体がブレるのはなぜ?|動的バランスと姿勢制御

2026/09/24

歩いているとき、片足になったとき、スクワットやランジをしたとき。「身体がブレる」と感じた経験は、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。

「体幹が弱いのかもしれない」「筋力が足りないのかな」——そう考えたくなる気持ちはよくわかります。ただ、身体のブレは筋力だけで説明できるものではありません。

私たちの身体は、動いている間ずっと止まっているわけではなく、重心の位置や足元の支持状態、視覚・前庭覚・体性感覚から得られる情報をもとに、姿勢を絶えず調整し続けています。動作中の「ブレ」を考えるには、筋力に加えて、この姿勢のコントロールそのものに目を向ける必要があります。

この記事では、「動的バランス」とは何か、なぜ動作中に身体はブレるのか、そしてBALANCE LABがどのような視点で身体の動きを見ているのかをお伝えします。

動的バランスとは?「ブレないこと」とは少し違います

「バランスが良い」と聞くと、身体がまったく揺れない状態を思い浮かべるかもしれません。ですが、歩いたり走ったり、片足で身体を支えたりするとき、身体の重心は常に動いています。

つまり動的バランスで大切なのは、「どれだけ動かないか」ではなく、動いている重心を適切にコントロールしながら必要な安定性を保つこと、そして姿勢が崩れかけたときに立て直せることです。

Hofらは、重心の位置だけでなく移動速度も含めて動的な安定性を捉える「extrapolated center of mass(XCoM)」という考え方を示しています。歩行のような動的な状態の安定性を扱う代表的なバイオメカニクスモデルのひとつです。

動作中の身体には、ある程度の揺れや重心移動があって当然です。むしろ大事なのは、必要な方向へ身体を動かせること、動いている途中で姿勢を調整できること、外から力が加わったときに立て直せること、そして次の動作へスムーズにつなげられること——こうした「動きの中で姿勢を調整する能力」です。

「少し揺れたからバランスが悪い」と単純に判断できるものではないのです。

動作中の「ブレ」を理解する5つのポイント

① 身体の重心そのものが動いている

歩行や片足立ち、スクワットでは、身体の重心そのものが移動します。特に歩行では支持する足が入れ替わるため、身体は「止まる」のではなく、重心を移動させながら次の一歩へと進んでいきます。

動作中に身体が動くこと自体は問題ではありません。どのように重心を移動させ、その動きをコントロールしているかが重要なのです。

② 身体を支える足・支持面が変化する

両足で立っているときと片足で立っているときでは、身体を支える条件がまったく異なります。両足なら左右で支え合えますが、片足になると支える足はひとつだけ。歩行ではさらに左右の足が交互に支持を担うため、身体はそのつど姿勢を調整し直さなければなりません。支持する足や支持面が変わるほど、求められる姿勢調整の条件も変わっていきます。

③ 視覚・前庭覚・体性感覚から情報を受け取る

姿勢を保つには、身体が「今どういう状態にあるか」を知る手がかりが必要です。周囲の景色や身体の位置を伝える視覚、頭部の動きや重力に対する位置関係に関する情報を伝える前庭系からの感覚、筋や関節、皮膚から伝わる体性感覚——これらは別々に働くのではなく、複数の感覚情報を組み合わせながら姿勢制御に使われています。

さらに、周囲の条件が変わると、どの感覚にどれだけ頼るかという配分も変化します。これは「sensory reweighting(感覚の重みづけの調整)」として研究されている現象です。

④ 得られた情報をもとに、身体を調整する

感覚情報を受け取っただけでは姿勢は保てません。得られた情報を利用しながら、筋活動や関節運動などが調整され、姿勢の安定が保たれています。身体が少し傾けば、その傾きに応じて足関節や股関節、体幹などが動員されます。

ここで気をつけたいのは、「この筋肉が弱いからブレる」と一つの筋肉だけで説明しないことです。実際の動作では、複数の関節・筋肉・感覚情報が絡み合いながら身体を調整しています。

⑤ 動作の速さや外乱によって、姿勢制御の要求は変わる

ゆっくり立っているときと歩いているときとでは、身体に求められる姿勢制御は同じではありません。突然身体を押された場合には、予測していなかった状況への対応も必要になります。

「止まっているときは平気なのに、動くとブレる」という場合には、筋力だけを見るのではなく、動作の中で身体がどう姿勢を調整しているかを見ることが重要になってきます。

片足立ちだけでは分からない?姿勢制御を見るときのポイント

片足立ちは、一つの足で身体を支えたときの姿勢制御を見る方法のひとつです。ただし、片足立ちができるかどうかだけで、動的バランス全体を評価することはできません。動的・機能的バランスを評価するテストにはさまざまな種類があり、2024年のsystematic reviewでも、それぞれのテストが異なる測定特性を持つことが示されています。

BALANCE LABでは、片足で立てるかどうかそのものよりも、左右で違いがあるか、どちらの方向に動揺しやすいか、動揺がどれくらい繰り返されるか、足・膝・股関節・体幹をどう使って姿勢を保っているか、といった点を観察します。同じ「片足立ちができる」という結果でも、その中身は人によって違うからです。

なぜ条件を変えて姿勢制御を見るのか?

同じ姿勢でも、条件を変えると身体の反応は変わります。

目を開けているときは周囲の景色から姿勢に関する情報を得られますが、目を閉じるとその視覚情報が使いにくくなります。その結果、視覚以外の感覚に頼る必要性が高まります。視覚・体性感覚・前庭系からの情報が姿勢動揺に影響することは研究でも示されていますが、「目を閉じて揺れた=前庭機能に問題がある」ということではありません。

支持面も同様です。硬い床と柔らかい面とでは、足元から得られる情報や身体を支える条件が変わり、実際に視覚情報・支持面・頭部位置などの条件によって姿勢動揺が変化することが報告されています。「硬い床では安定しているのに、条件が変わると揺れる」ということは十分に起こり得ます。

頭を動かすことでも、視線を安定させたり頭部の動きを捉えたりするための姿勢制御の要求が変わります。頭を動かして身体が揺れたからといって、それだけで特定の神経や器官の異常と判断することはできません。姿勢制御には複数の感覚情報が関わっているため、一つの反応だけで原因を決めつけないことが大切です。

BALANCE LABでは、条件を変えたときの身体の反応を見ます

BALANCE LABでは、一つの検査だけで身体の状態を決めるのではなく、実際の動作や姿勢、条件を変えたときの反応を組み合わせて確認しています。

まず、実際に動いている身体を見ます。必要に応じて、歩行、外乱に対する姿勢反応、スクワット、ランジ、ニーインなどの動作分析を行います。スクワットやランジでは「できる・できない」だけでなく、下肢や体幹がどう動いているかを観察します。

外乱を加えたときの反応も見ます。両足立位では閉眼した状態で、左右・前後から予告なく力を加えます。片足立脚では対側の肩を床方向へ押し、身体がどう姿勢を立て直すかを確認します。左右差、動揺する方向、動揺の頻度、姿勢戦略などを見ますが、「どの方向へ揺れたか」だけで原因を決めることはしません。外乱への反応は身体全体の協調によって生まれるため、複数の所見を組み合わせて考えます。

条件を変えて反応を確認することもあります。両足立位、片足立脚、軟らかい支持面、閉眼、閉眼+頭部回旋など。目的は難しい条件をクリアすることではなく、条件が変わったときに身体の反応がどう変化するかを見ることです。

必要に応じて、眼球運動や前庭系に関わる反応も確認します。滑動性眼球運動(スムーズパシュート)、サッケード、縞模様の視覚刺激に対する眼球運動、VOR(前庭動眼反射)、VORキャンセル、ヘッドシェイクテストなどです。これらには視覚系だけでなく脳幹、小脳、前庭系など複数の神経系が関わっているため、「前庭神経の検査」「小脳機能の検査」と単純に括るのではなく、姿勢制御を考えるための補助的な情報のひとつとして位置づけています。

反応速度や移動を伴う課題を確認することもあります。6つのPodを単色条件で使用し、視覚刺激への反応速度をみる課題や、限られたスペースでの移動課題を行うことがあります。ただし、これらは「動的バランスそのものを測る検査」ではなく、動作を伴う別の側面を見る課題という位置づけです(BlazePodを用いたステッピング反応テストについては、2025年の研究で高齢者を対象に動的バランス関連指標との関連が検討されていますが、対象や課題は限定的です)。

局所の状態を確認することもあります。左右へのステップで揺れが目立つ場合、中殿筋などの筋緊張や圧痛など、局所の状態を確認することがあります。ただし、これは「ブレの原因はここにある」と決めつけるためではなく、実際の動作を見た上で必要な情報を積み重ねていくための評価です。

動的バランスは、スポーツだけでなく日常動作にも関係します

動的バランスと聞くと、スポーツ選手を思い浮かべるかもしれません。ですが、姿勢を調整しながら動く場面は、日常生活のいたるところにあります。歩く、階段を上り下りする、段差を越える、不整地を歩く、振り向く、荷物を持って歩く——どれも動的バランスが関わる動作です。

スポーツになると、走る・止まる・片足で力を発揮する・相手やボールの動きに反応する、といった複雑さが加わります。動的バランスは「動かずに立っていられる能力」だけでは捉えきれません。動きながら、変化する状況に合わせて身体を調整すること。それが動的バランスを考えるうえでの核心です。

動いているときの「ブレ」が気になる方へ

身体がブレると、「もっと筋力をつけた方がいいのかな」と考えてしまうかもしれません。筋力が身体を動かすための重要な要素であることは間違いありません。ですが、動作中の安定性は筋力だけで決まるわけではありません。

重心の移動、支持する足、視覚・前庭覚・体性感覚からの情報、筋肉や関節の動き、そしてそれらを組み合わせて姿勢を調整する仕組み。さまざまな要素が絡み合っています。

だからこそ身体のブレを見るときは、「どれくらいブレるか」だけでなく、「どんな動作で」「どの方向に」「どんな条件で」変化するのかを見ることが大切です。BALANCE LABでは、身体の一部分だけを見るのではなく、実際の動作や姿勢、感覚条件を変えたときの反応など、複数の情報を組み合わせながら身体の状態を考えています。

「立っているときは問題ないのに、動くとブレる」「片足になると左右で違いがある」「スポーツの動作で姿勢が崩れやすい」——そんなときは、「筋力不足」と決めつけるのではなく、どんな動作で、どんな条件で、身体のコントロールが変化しているのかに目を向けてみることが大切です。

よくある質問

Q1. 身体がブレるのは筋力不足ですか?
必ずしもそうとは限りません。筋力は重要な要素の一つですが、姿勢制御には視覚・前庭覚・体性感覚などの感覚情報や、身体の重心・支持面、動作の速さなど、さまざまな要素が関わっています。ブレだけから「筋力不足」と判断することはできません。

Q2. 片足立ちが苦手だと、バランスが悪いのでしょうか?
片足立ちは姿勢制御を見る方法の一つですが、動的バランス全体を表すものではありません。左右差や動揺の方向、身体の使い方を見ることで、より多くの情報が得られる場合があります。

Q3. 目を閉じると身体が揺れるのはなぜですか?
目を閉じることで、姿勢を保つために使える視覚情報が減るためです。その結果、視覚以外の感覚を利用する必要性が高まります。視覚・体性感覚・前庭系からの情報は、それぞれ姿勢制御に関わっていますが、目を閉じて揺れたことだけから特定の器官や神経の異常を判断することはできません。

Q4. 動的バランスはスポーツをしない人にも必要ですか?
はい。歩行、階段、段差、不整地など、日常生活にも身体を動かしながら姿勢を調整する場面があります。動的バランスはスポーツだけに関係するものではありません。

Q5. 動いているときのブレが気になる場合、何を見ればいいですか?
まずは「どの動作でブレるのか」を確認することが大切です。歩行なのか片足なのか、スクワットやランジなのか、あるいは特定の条件で変化するのか。BALANCE LABでは実際の動作を確認したうえで、必要に応じて姿勢や感覚条件を変えた評価などを組み合わせ、身体の反応を確認しています。

ご注意

閉眼での立位や不安定な支持面でのバランス課題、外乱を伴う評価などは、転倒につながる可能性があります。記事で紹介している評価を、自己判断で無理に再現することはおすすめしません。

また、強いめまい、突然のふらつき、繰り返す転倒、急な麻痺・しびれ・言葉の障害などがある場合は、セルフケアや運動よりも医療機関への相談を優先してください。

まとめ

動いているときの身体のブレは、「筋力が弱いから」の一言で片づけられるものではありません。重心の移動、支持する足や支持面の変化、視覚・前庭覚・体性感覚からの情報、筋肉や関節の動き、そしてそれらを調整する姿勢制御——これらが組み合わさって、私たちの動作は成り立っています。

動的バランスを見るときは、「ブレないこと」を目標にするのではなく、動いている身体がどのように姿勢を調整しているのかに目を向けることが大切です。

BALANCE LABでは、歩行やスクワット、ランジ、外乱などの実際の動作を中心に、必要に応じて姿勢や感覚条件を変えた評価、眼球運動や反応課題などを組み合わせながら、身体の状態を多角的に確認しています。

健康は、骨格・筋肉・神経の機能から。

動いているときの「ブレ」が気になるときは、ブレそのものだけを見るのではなく、「いつ・どんな動作で・どのように変化するのか」という視点から身体を見直してみてください。

参考文献

1.Hof AL, Gazendam MGJ, Sinke WE. The condition for dynamic stability. Journal of Biomechanics. 2005;38(1):1-8. doi:10.1016/j.jbiomech.2004.03.025.

2.Assländer L, Peterka RJ. Sensory reweighting dynamics in human postural control. Journal of Neurophysiology. 2014;111(9):1852-1864. doi:10.1152/jn.00669.2013.

3.Lesch KJ, Tuomisto S, Tikkanen HO, Venojärvi M. Validity and Reliability of Dynamic and Functional Balance Tests in People Aged 19-54: A Systematic Review. International Journal of Sports Physical Therapy. 2024;19(4):381-393. doi:10.26603/001c.94612.

4.Ekvall Hansson E, Beckman A, Håkansson A. Effect of vision, proprioception, and the position of the vestibular organ on postural sway. Acta Oto-Laryngologica. 2010;130(12):1358-1363. doi:10.3109/00016489.2010.498024.

5.Adamo DE, Pociask FD, Goldberg A. The contribution of head position, standing surface and vision to postural control in young adults. Journal of Vestibular Research. 2013;23(1):33-40. doi:10.3233/VES-130473.

6.Ilin D, Kalron A. Reproducibility and convergent validity of the blazepod stepping reaction test in older people. Gait & Posture. 2025;119:1-6. doi:10.1016/j.gaitpost.2025.02.015.

バランス ラボ 【カイロプラクティック】

神経・骨格・筋肉の機能を調律します。

代表 笠井 宗明 BCSc,DACACD,CSCS

経歴:19年

・分析の強み: 1つの結果で判断しない。構造・神経・栄養のクロスチェックによる精密分析。

・解決の強み: カイロの枠を超えた、視覚・平衡感覚・固有感覚への多層的アプローチ。

・ゴールの強み: 痛みの消失は通過点。「思い通りに動ける喜び」を取り戻す場所。

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